それでも私は。
"いつもの場所で。21時に。"
こんなドラマでしか見たことないようなLINEがまさか自分に来るようになるとは思わなかった。
"了解です。"とだけ返して携帯を閉じた。ただのそういう相手だから、なんて自分に言い聞かせてる割には、お気に入りの下着で、彼好みの服を着ていく自分に笑ってしまう。仕事で疲れてて重かった体が軽く感じる。なんて単純な女なんだろう。
電車でいつものホテルに向かう。窓に映った自分の顔があんなに気合を入れて化粧をしたはずなのになんでだろう。歪んで、ぼやけて見えた。
ホテルに着き、部屋の鍵を受け取って7階の1番右の部屋に入る。もちろん慧はいない。人を呼び出すくせに私より早く居たことがない。テレビを見ながらお酒を呑む。テレビではプロボーズをする企画で、された女性が泣いて喜んでいる。あぁ、幸せそう。好きな人に、そして自分のことを好きでいてくれる人にプロボーズされてキスされて。
ノックの音が聞こえた。開けると私が待っていた張本人が立っていた。なんで私はこんな男を好きでいなきゃいけないんだろう、なんて考えていたが、扉を閉じた途端、甘くて溶けてしまいそうなキスをされてそんな考えはどこかに飛んで行ってしまった。私の頭を左手で掴んでキスをする彼の指に硬いものを感じる。薬指の指輪の感触が考えたくなくても伝わってくる。1回も外してくれたことはない。
「今日はどこに出張のご予定でしょうか?」なんて笑いながら聞くと『今日は京都で大事な会議があるので前乗りしています。』なんて返してきた。「京都に行ってることになってるのか~(笑)いいなぁ、着物来てお寺巡りしたいなぁ…」『じゃあ今度行く?』なんて聞いてくるけど、行ってくれないのは分かってること。「楽しみだ~」と答えたが、こんなの茶番に過ぎない。そもそも太陽が出てる時に二人で出歩いたことがない。
『ちょっと俺お風呂入ってくるわ。』と言ってジャケットとネクタイをベッドに放り投げた。少しだるそうにネクタイを取る姿が私の【大好きな彼】だった。
彼の匂いがするジャケットをハンガーに掛ける。いかにもモテそうな柔らかな香りとタバコの臭いが微かにした。
髪の毛をタオルで拭きながら上半身裸で彼が出てきた。「冷房ついてるんだから風邪ひくよ?上なんか羽織りなよ、もう。」『どうせ脱ぐし。』当たり前のように言われた。まあそれ目的でここに居るのだから、当たり前か。窓際にあるソファに座った私を、手招きして自分の横に座らせた。髪の毛が濡れてて艶っぽい。『で、お嬢さん?俺が好きな服を着てるのはわざと?』なんて腰に手を回しながら聞いてきた。『もしそうなら、なかなかのやり手だね?』「私の趣味だから。」と言うと、そっか、と笑いながら、静かに私を押して、ベッドに沈めた。
慧は私の名前をなかなか呼んでくれない。本当は呼んで欲しいけど、そんなこともすぐ考えられなくなるくらい彼でいっぱいになる。してる最中の彼の微笑み方が、私が慧に初めて出会った時に私に向けた顔と同じだ。私はこの慧に溺れた。
キスをする時に私に触れる彼の髪の毛が冷たくてくすぐったい。そんな事も幸せに感じる。そんな事でも彼を感じることが出来る。そんな事でさえも彼を感じてしまう。
終わって二人で静かに目を閉じる。ふと彼に出会った時の事を思い出した。あの頃は幸せだったな、なんて考えた。なんで今の私は幸せじゃないのだろう、どうしてそう考えられなかったのだろう、ともやもやした思いの中、私を抱きしめる彼の右手に顔を埋めて眠りに落ちた。
慧の声で目覚めた。なんて幸せな朝なのだろう。慧は着替え終わっていて、いつでも出れる状態だった。「…ん、おはよ。もう行くの?」『もう少ししたら行く。眠れるお姫様を起こしてから行こうと思いまして。』「またどうせ会うのに。」『その時は上司と部下でしょ?俺とお前じゃない。』『そろそろ行く。また。』ジャケットを羽織って、私の頑張って、という声に振り向かないまま左手を上でひらひらとさせてドアを閉じた。
………俺とお前じゃない、か。本当に慧はここにいないくせに。
有岡くんと1日過ごしたら。
有岡くんの帰りを待つ私。彼はいつも先に寝てていいよ、とかゴロゴロしてていいからね、なんて言うけれど出来ないのだ。なぜだか先に寝ようともなかなか寝付けず、有岡くんが帰ってきたら来たで、すぐに寝てしまう。それは私が不眠症な訳ではなくて、有岡くんの帰りが待ち遠しくて、帰ってきたら安心して寝てしまうのだ。この話を聞けばわかる通り私は有岡くんの事が好…大好きだ。
そんなことを考えながらボーっとソファでテレビを見ていると、ドアの開く音がした。
「ただいま。」大好きな人の声がした。『お、おかえりっ』緊張して未だに声が裏返ってしまう。「何でそんな緊張してんの(笑)」と言いながら私の頭をポンっと叩くのはきっと緊張をほぐそうとしてくれている。だけどそのせいで緊張度は更に上がってる事に有岡くんは気付いているんだろうか。
私が緊張をするのには訳がある。有岡くんは私の3歳年上で少し前までは先輩と後輩の関係だった。それがまさか彼の家で彼の帰りを待つ事になるとは…5ヶ月前の私は思ってもいなかっただろう。
本当は『大貴』と呼んで欲しいらしく何度もお願いされたが、どうしても呼べなかった。その時に言われた「まぁ、結婚すれば名字同じになるしその時に呼んで貰えばいっか。」なんて微笑みかけてくる彼の顔と高鳴る胸の鼓動は今でも思い出すだけで照れてしまう。
今日は彼の帰りが遅いので夕飯は作っていない。もちろん事前に連絡をしてくれている。そのLINEの最後に「明日はお前の夕飯楽しみにしてっから。」なんて言葉を付けてくる所に彼のモテる意味がよくわかるだろう。
「お前いつまで経っても慣れねぇよな(笑)」なんてソファの私の横に座りながら言ってきた。『(しょうがないじゃん…年上だし、憧れだったし、毎日かっこよすぎだし…)』なんてことを考えながら黙りこんでいると、「何?俺がかっこよすぎるって?」なんて言いながら顔を覗き込んでくる。その顔のかっこよさと言ったら…いや、言うまでもない。
『ち、違「冗談、じょーだん(笑)まあ前まで先輩後輩だったしな(笑)距離あるのも無理ないか。」なんて少し悲しそうな表情で言ってくるから、本当の気持ちを伝えようと「あのね、大貴が!!いつも早く帰ってこないかな、って私待ってるし、なんかいつもかっこよくて、えっと、あの」なんて意味不明な言葉を口走ったせいで軽くパニック状態。おまけに有岡くんは口元緩みっぱなしのニヤケ状態。とりあえず落ち着く為にトイレに逃げ込…めるはずもなく、手を引っ張られ有岡くんの顔まで数10cmの距離に。「っで、何だって?」なんてニヤニヤしながら聞いてくるから、『ヤダ!離して!違う!何も言ってないもん!バカバカ!嫌い!』なんて恥ずかしさのあまり我を忘れて暴れる。「俺は好きだけどな~」「馬鹿は否定できない(笑)」なんて彼はいつも余裕そう。
いつだってそうだ。私に怒った事は一度もないし、「可愛い。」とか「その服似合うね。」なんてセリフは私が年下だから妹くらいに思って言ってるんだろう。今だって飲み物を取りに行くついでに頭をポンポンっとして「落ち着け落ち着け(笑)」なんて言ってる彼は完全に妹をあやすお兄ちゃん。なんなら大喧嘩してどっちかが家を出ていくくらいの事だってしたい。いや、そうなりたくはないけど、それくらい私を対等に見て欲しいのに。
いつだっけか「綺麗」って言われたくて、大人の女性に見られたくて、いつもより色気のある服やメイクにした事があったっけ。もちろん有岡くんがその変化に気付かない訳もなく、どうしたの?なんかあるの?なんて言ってきたけど『別に、友達と遊ぶだけ。』なんて試しに冷たく返したら、「そっか!いつもと違うから驚いちゃった。可愛いな~(笑)」と言われた。ドキッとしたでもなく、綺麗だな、でもなく私が望んでいた言葉を言われなかった事で私はもう妹としてしか見られてないんだなと思うと、なんだか自分が馬鹿馬鹿しく思えて無理をするのを辞めた。もう好きって言ってもらえればいいや。横に居てもらえればもういいや、なんて半ば諦めモードで。
飲み物を持ってきた有岡くんはまた私の横に座り、「ごめんごめん(笑)俺が距離がある、なんて言って顔に出したのが悪いんだよな、ありがと。俺は別にお前がいればいいから。」私の精一杯のフォローも彼にバレるし、しかも彼に謝らせる自分の不甲斐なさに悲しくなった。『それは私が年下だからそういう事言うの?私が同い年だったらそういうこと言わないの?』勢いで言ってしまった。「んな訳ないだろ?彼女だからに決まっ『もっと年上のお姉様みたいな人が良かった?それだったら私に甘えてくれたかな、弱音吐いてくれたかな、支えられたかな。』なんて更に困らせる事を言ってしまった。私はいつも有岡くんに助けてもらってきた。私が何か有岡くんにしようとも、彼の方が一枚上手で私より先回りしてやってくれる。それはもちろん嬉しいけど、同時に何も出来ない自分に気付く時でもある。
「あのなー?俺はお前の事が好きだからお前に色々してるの。もしお前が年上でも同い年でも、俺はお前に尽くすから。俺だってお前にかっこいいって思われたくていっぱいいっぱいなの。もう、すぐそういうこと考えるんだから~よっぽどお前の方が考えて行動してて大人だわ(笑)」照れながら言う有岡くんがいつも見ない顔の彼を見れたことに嬉しくなって、『…だいきっ』なんて言って抱きついてみた。「おまっ、それわかってやってるだろ!」…もちろん分かってる。私も案外大人だったかも、なんて思いながら抱きしめていた手の力を強めて。「お前がそんなことしてくるなら…」なんて言って、いきなり引っ張られてベッドに。何をされるのかと、急に緊張して固まる私に、跨って擽る有岡くん。確かに、今日はそんな雰囲気じゃないな、なんて思いながら私も負けず劣らず有岡くんを擽る。布団の中で暴れるふたりの動きを止めたのは、私の目を手で覆ってキスをする彼の唇。やっぱり一枚上手。でもそれが悪くないって思えた日。
「疲れた~なんでこんな夜にこんなことしなきゃいけないんだよ!」
『先にしてきたの有岡くんだから(笑)もう寝る!』
「おやすみ。」
『おやすみ、大貴。』
伊野尾くんと一日過ごしたら。
「伊野尾くんと一日過ごしたら。」何気ない日々を伊野尾くんと過ごしたい、という私の妄想から生まれたブログ。
朝9時にゆっくり起床。
いくら休みだからといって9時くらいには起きなきゃ、と体を起こす私に対して、慧は「まだ起きたくない。」なんて子供みたいに拗ねてる。
『休みだからって生活リズム崩すの良くないよ』なーんて優しい言葉を掛けてもいっこうに体起こす気は無し。
必殺技の『起きたらご褒美あげるのにな~』なんて言ってみたりする。本当は私が慧とキスしたいだけ。ご褒美なんて口先だけで欲望だだ漏れの私。
「元々俺の勝手でいつも色々してるんだからご褒美でも何でもないじゃん。それとも何?今までした事ないとっておきの事でもしてくれるの?」あれれ、必殺技効果なさ過ぎ。ふざけた感じでもなくナチュラル言ってくるから、『(…こいつはダメだ、なんて普通の顔して朝から頭おかしいこと言ってんだ…。無視しよう。)』と無言で朝ごはんでも作りに行こうとしたら、いきなり腕を引っ張って気付いた時にはお布団の中に逆戻り。
ばたつく私に「はい、俺の勝手~」なんて言いながら後ろからギューギュー抱きついてくる。暴れてる私の行動に反して、お顔はニヤニヤが止まらない。本当はこれを待ってたり。でも秘密、バレたら茶化されてろくな事にならん。
なんだかんだで10時半。「さすがに起きよ。」とか普通の顔して私が1時間半前に言ったことを繰り返してやがる。それ、さっき私言ったから。
遅めの朝食を作ることにした私は何が食べたいか聞くと、「パン。」と一言。
いや、米は。お前の米好きはキャラだったのか、そうやって芸能界生きてきたのか。なんてふざけたこと言おうとしたら、「お前その顔は俺がパンって言った事に驚いてる顔だろ?いくら米が好きだからってパン食べないとは限らないだろ?お前猿が毎日バナナだけで生きてると思ってんの?」
完全に馬鹿にされてる。まあいい。たしかにそうだから反論はできない。適当にあしらってパンに合うメニューでも作ろう。
そうしてるうちにご飯ができたのが10時50分。何故か慧の家では向かい合わせではなく、隣に座ってご飯を食べる。もちろん私が自らそんなポジションにつく訳ない。慧がそうしろと言ってきたのだ。
会話らしい会話はしないでご飯を食べる。これが慧といる時のスタイル。別に嫌じゃない。気を遣わなくてもいい関係って感じ。そもそも付き合ってるし。
片付けが済んで二人の定位置はソファ。みんなが想像するようなことは一切しない。二人ともソファの端と端で寄りかかって携帯いじりながらテレビをチラ見。たまに私が面白い動画を見せて一緒に笑ったりする。
そんないつもの時間がすぎる途中に、慧が「お前ってさ男友達いんの?さっき動画見た時通知完全に男の名前だったけど。いるんだね~逆に安心」…は?彼女に言う言葉なのそれ。『ねえいるけど?馬鹿にしないで?そこは嫉妬して[俺以外の男と関わんな]とか言うべき少女漫画的展開な流れだったでしょうが。』「じゃあ言ってやるけど、お前そしたら会社の上司無視することになるぞ。絶対1週間以内にクビになるけど?そういうこと考えて俺は言ってないんだけど。本当は離したくない。独占したい。」
みんなキュンキュンしてるでしょ、違うよ、キュンキュンしちゃダメだよ?半分ニヤけながら言ってるからな、この人。挙句の果てには「ねえ俺優しくない?俺優しすぎなんだけど。」なんて言ってやがる。これが私達のじゃれ合い。いつもこんな感じで私が馬鹿にされる。反抗するけど、いつもふざけた少女漫画的セリフにキュンキュンしてる私がいるのも秘密。
そんなこんなで家事もしっかりこなす私。慧は相変わらずソファの定位置でゴロゴロ。お昼ごはんを作ってるキッチンから慧が見えるけど、案外こんなのも悪くないかも。結婚したらこんな感じなのかな、なんて考えてみたり。それにしてもこの位置から見える慧がなんだかんだ言ってかっこいいから困る。あ~黙ってればイケメンなのに。
ご飯が出来て食べ始めたのが14:00過ぎ。もっと早く昼ごはん食べて、買い物行こうと思ってたのに(というかもっと早く起きるつもりだったのに)相変わらず慧のせいで調子狂う。でもその乱されたペースもなんだか私が慧に染まってるみたいで嬉しくなる。結局私が慧の事大好きなんだな、うん。それは認める、何でも許せちゃうもん。
昼ごはんが食べ終わって何気なく映画を見始めた。私が好きなサスペンス。女子でサスペンス好きを公言してる、ってよくひかれるけど慧は「お前の趣味だから」なんて言って一緒に普通に観てくれる。こんな所もイケメン過ぎて困る。ここは慧なら馬鹿にするところじゃん…。これだから私は慧が好き。彼の事を私が嫌いになることは無い。
……あれれ、いつの間にか寝てた。慧が居ないし。起き上がろうとしたら自分にブランケットが掛けてあった。ずるい。ずるすぎる。慧が私をどんどん好きにさせる。
それよりどこへ行ったんだろうか。まあいいやと思いながら、昼ごはんの時サボった皿洗いをしよう…なんだ、今日はどうしたんだ。皿も洗ってある。どうしたの、どうしたの慧。もう好きが一周回って、恐怖に変わった。今日の慧は確実におかしい。
そんな恐怖(?)が私の頭をぐるぐる駆け回っている時に、ドアが開く音がした。「あ、起きてたんだ」『どこ行ってたの』「冷蔵庫何も無かったからなんか買ってこようと思って」
…なんだなんだ。さっきから狂わされてばっかり。今日は慧が料理作ってくれるのか…!なんてキラキラした目で慧を見つめてると「肉じゃがの材料買ってきた。はい。」自分で作るわけなかったか。そうだよな、そうだよなわかってるよ。上がっていた慧への気持ちもいつもの慧が言うような言葉を聞いて落ち着いてきた。
言われた通り肉じゃがを作っていると、「急にお前の肉じゃが食べたくなっちゃってさ~」と何気なく言う慧。『任せろ。』なんて普通に返したけど、実は胸キュンポイントかなり上がってた。
そして出来上がった肉じゃがとその他諸々を食べ始めたのは20:30。朝昼と同じ様にもちろん横隣に座る。そして無言。久しぶり慧の隣で慧の出てるテレビ番組を観た。慧は気にしないふりしてるけど、きっと気になってるはずだから静かにチャンネルを変えると目が合った。
そんなこんなで交代でお風呂に入った。髪の毛を乾かさないと髪の毛が痛むのはわかるけど、右手でドライヤーを持って左手で髪の毛を揺らしながら乾かすのって案外疲れる。本当ならサラサラ髪の毛で彼氏を誘惑すべきなのはわかってる。けど面倒臭い。自分の女子力の低さに愕然とする、のにソファを動かない。エアコンにあたりながらボーッとテレビ見るのは最高すぎる。
そして慧がシャワーを浴び終わって出てきた。髪の毛が濡れてて艶っぽい。
「おい女の子なんだから髪の毛くらい乾かせよ。」だって面倒臭いんだもん、なんて言いながらアイスを食べる。俺も食べるなんて言ってソファで横並びに濡れた髪の毛のふたりがアイス食べてる。なんかその現実が平和でいいな、と思って思わず微笑んでしまう。何笑ってんのとか言いつつ、慧も一緒になって笑う。何だこの平和すぎる図。
エアコンが効いた部屋で髪の毛も乾かさずアイスを食べたら案の定寒くなってきた。今寒いって言ったら、慧にほらみろと馬鹿にされるに違いない。意地でも言わない。
意地を張ってソファの上で体育座りをして寒さを凌いでいた。うぅ、寒い。
「お前寒いんだろ、震えてるよ」『寒くないし。貧乏ゆすりだもん。』なんて可愛くないんだろうか、私は。どうせなら寒いから温めて♡くらいの勢いで言えばよかったじゃないか、私。「素直じゃないやつは嫌いだよ、もう。」「まあそれがお前だけど。」なんて言いながら毛布を持ってくる慧の優しさ。そしてドライヤーを持ってきて後ろから乾かしてくれる。こんなに優しいとかきっと明日は雪が降る。この暑い夏に慧のせいできっと雪が降るんだろう。
私はこの間ずっと黙っていた。ふざけた事を考えていたのも、慧の優しさのせいで照れて顔に出てしまいそうだから、自分の気持ちを必死で誤魔化す為にずっと黙っていた。
私の髪の毛を乾かし終わった後、無言でドライヤーを突き出された。私は慧の髪の毛を乾かす。さっきイチャイチャするようなカップルじゃないとかほざいてたけど、これのどこがイチャイチャじゃないんだよ、私。
お互いに1時間だけ仕事の用事を済ませて12:30くらいにベッドに入った。二人で他愛も無い話をしながらゴロゴロしていた。
「今日の俺らなんかすごい新婚みたいだったな。」なんて笑いながら言う。「お前が結婚相手なのもなんか悪くはないな。」素直じゃない慧が言ってきた言葉。『素直じゃないやつは嫌いだよ。』とさっき言われた言葉をそっくりそのまま返してやった。
そんな一日を過ごした。こんな日も悪くないなと思いながら眠りについた。
明日も慧と平和にすごせますように。
「MyGirl」で頭を巡った妄想
今回のアルバム、『DEAR.』に収録されたユニット曲 My Girl は、2人の男が1人の女、sheを取り合うという曲ですが、その3人の背景を私なりに考えてみました。
…考えてみた、というより歌詞の一部分を切り取って、巡りに巡らせたただの妄想です。たまに歌詞と合わない部分がありますが、妄想なので温かい目で見守っていただけると幸いです。
初めに、山田くんはsheの同級生。それなりに仲も良く、二人で話す事も多々有るが、密かに積もる山田くんの一方的な想いはsheには届いていない。
そして有岡くんは、sheのお兄ちゃん。可愛い妹を独り占めしたい気持ちが募るが、兄妹という関係が邪魔して想いを伝えられない。
歌詞の順番が少し前後しますが、伝えたいことは変わらないので、大目に見てやってください……
まず最初に
山田「なんて言おうともなんにも変わらないさ」
この歌詞は有岡くんへの挑発と考えます。【どんなに好きな想いが強くても、伝えようとも、兄妹という関係は変わらない(だからさっさと身を引け)】と言う。
そこで2番の冒頭の歌詞に
有岡『You know そんな言葉いくら並べて Can't you see?変わりはしない』
そしてこの歌詞は山田くんへの返信と考えます。【お前がなんと言おうと、俺が好きな気持ちは変わらないよ。わかんないの?】とこれまた挑発に挑発で返す有岡くん。
そして1番で注目したいポイントは
"my love"
という表現です。これ以前にも以降にもこの言葉は一度しか出てきません。
兄妹という関係である有岡くんとは違って、本当の「愛」を伝えられる山田くんの最大限の表現。「私の愛しい人」くらいの意味でしょうか。
山田くんの歌詞には
「そばにいたい」「守りたい」「一目見た時から気持ちは揺るがない」
と素直な表現が多いところから、素直にsheに恋をする、でも叶わない、叶えようとすることを躊躇するちょっぴり切ない青春のような恋が歌われています。
一方有岡くんの歌詞からは
『彼女と僕の間を Can't you see? 邪魔はできない』『僕達は離れない』
と、一見有岡くんが優勢のように見えますが、兄妹という侵されない、侵してはいけない関係、恋人という関係ではなく、兄妹関係で離れない、という悲しい現実が表れてるように感じます。叶わない恋。叶えてはいけない恋。
そしてサビ前の
有岡『あの眩しい笑顔をただみているだけなんてできないから』
この歌詞は、同じ家に住んでるからこそ、一緒に笑い合って可愛い笑顔を見ることはできるが、抱きしめることも、キスをすることも、自分の想いを伝えることですらできない苦悩の表れと捉えます。
そしてそれぞれの悩みを抱えてサビに突入。2人が「引き寄せたい」『離しはしない』と両者譲らない様子が見られます。
有岡くんの歌詞に頻繁に出てくる、
『僕達は変わらない』
という言葉。
良い意味では、【山田くんとは違い、近い距離でsheを守れる優越感】
一方悪い意味では、【距離は近いが、絶対に交わってはいけない関係。越えてはいけない一線のある関係】
そして有岡くんとsheを兄妹関係に結びつける最大のポイント。
"my girl" "my baby"
とsheの事を呼んでいたのに、突然
"僕のlady"
と呼びます。
妹を「一人の女」として見ている有岡くんの姿。ここに兄妹という関係性を感じました。
そして2人が1人ずつ言う、
「『僕だけを見て』」
有岡くんからは、どうかお願いだから俺の方を振り向いてくれ、という思い。
山田くんからは、優しく甘い声で、「俺のところにおいで?」という誘い。
最後はどちらのものになったかはわからないまま終わり迎えます。
ここからは完全なる私の妄想です。さらに温かい目で見てやって下さい。
結局有岡くんは、愛しい愛しいshe、である妹に想いを伝えずに終わります。このまま近い距離でsheを何もせずにいる事は無理だと感じた有岡くんは、少しsheに対して素っ気なく対応をし始めます。その我慢が積もりに積もって、自分の気持ちも知らずに話し掛けてくるsheに苛立ちを感じてしまい、強い口調で当たってしまいます。『本当はこんなつもりじゃないのに…』『ただ好きなだけなのに、兄妹という関係が邪魔をして想いも伝えられない』と悩みに悩んでしまう有岡くん。
そして何故か冷たくなったお兄ちゃんからの言葉に傷ついたsheの元に山田くんがやって来ます。有岡くんの妹への気持ちを知っている山田くんは自分はずるい男だと思いながらも、悲しんで弱っているsheの弱みに付け込んで、今まで以上に親密な仲になります。
そしてsheは悩みがあれば山田くんへ、山田くんは黙って聞いて慰めて、優しさで包み込む関係へ。
有岡くんとsheが気まずい関係になってから長い時間が経ち、sheの心の痛みも薄れてきた頃に、山田くんがsheに告白をします。辛い時支えてくれた大切な存在である山田くんからの告白を快く承諾し晴れて2人は付き合うことができました。
その事実を知った有岡くんは悲しげな笑顔でsheに『よかったな。』というセリフを言った後その場を去ります。
有岡くんの悲しい結末で終わるこのお話、そんな妄想がMyGirlを聴いた時に思いつきました。誰かこの映画作ってくれません?
色々なMyGirlの解釈がある中で、こんな聴き方をしてみれば新たな楽しみ方、そして今まで見つけられなかった事を発見したりできるかもしれません。
長々読んで頂きありがとうございました!